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沖縄の50年と祈り

7月に入ってすぐ、沖縄へ旅をしてきました。個性的な文化、民俗的な風習にひかれ、もう10回以上訪れています。

訪れるたびに、新しい発見があります。前にも書いたことがありますが、私は「島」という形態にとても興味があるのです。

離島のみならず、日本という島国も、視点を変えると大きな「島」。

もっと視点をかえると、地球も広大な宇宙の中の「青い島」。

限りある資源を用いて、多種多様な人々が平和に暮らすための知恵が、島にはあると考えています。

例えば、沖縄の最高の霊地と伝えられてきた「神の島」久高島。沖縄の斎場御嶽は、久高島を遥拝するための拝所です。

この島は全て共有地で個人の所有の土地がありませんでした。自転車で簡単に一周できてしまうような小さな島です。

沖縄本島との間の海はしばしば荒れ、物流も途絶えます。

風雨に耐え、島民で力を合わせて島に暮らしてきたのです。

その知恵の集大成が神事です。

国や村の祭りを執り行う公的な巫女が「ノロ」、人々の日常生活を助ける民間の巫女が「ユタ」、姉妹が兄弟を守る特殊な霊力は「オナリ神」。 女性が男性に比べ高い霊力を備えていると考えられ、この霊力のことを「セジ」と呼びました。セジを受け継ぐ祭りが12年に一度の奇祭、イザイホーです。(1978年が最後でした)

はやしのとても狭い偏った見方ではありますが、小さな島の中で、体力のあるものが力を持つとどうなるか、歴史を学ぶ中で何度も目にしてきました。そこには略奪があり、搾取があり、破壊と戦いと夥しい死と悲しみがあります。

でも、この島の人たちはそれを選ばなかった。おそらく、不毛な戦いを続けたことで編み出した知恵だと思いますが、年老いた、背も曲がった小さな女性に、「目に見えない力」を与えたのです。

「目に見えない力」がキーワードです。目に見える力の支配は、もう嫌というほど私たちは知っています。「目に見えない力」が平和に働くこともあれば、今世間を賑わしているカルト宗教などの支配にも繋がります。ここのバランスが難しい。

島から出たことのない女性に霊力が宿り、島を守り、さまざまな神事を通じて、政治的な力を持ち、崇められ拝まれる存在となることで、より大きな力からの侵略を防ぐ。

島の暮らしは、沖縄だけでなく、「地球島」も過酷で、予測不可能で、天災や病によってあっけなく崩れていたことでしょう。いのちが瞬く間に失われていく悲しみも日常であったことでしょう。

島の、小さな離島の歴史を学ぶことで、現代に生きる私たちへのヒントがたくさんあるのではないかと思います。

今回の旅では、シュノーケリングとダイビング+沖縄復帰50年を祈念しての戦跡を訪れる旅となりました。

全く泳げず、高所恐怖症で船酔いする私が、数年前に友人から手ほどきを受け、シュノーケリングに挑戦し、どっぷりと海の中の世界に魅入られてしまったのです。

去年は初めてダイビングをし、海の底の世界にさらに魅入られてしまいました。

慶良間諸島の座間味のスポットへ1時間かけジェット船で向かいました。途中、船と並んでトビウオがキラキラと背中を光らせて飛んでいました。

海亀と泳ぎ、ダイビングはガイドの方の素晴らしい誘導に安心してサンゴの中の熱帯魚と遊びました。




戦跡は那覇の海軍壕からスタートしました。兵士たちが掘り抜いた地下の岩盤の中には

司令室や多くの部屋がありました。

低い天井、入り口を塞がれたらどこにも逃げ場がない状況の中での戦の恐怖を感じました。

疎開のため1400人の子どもを乗せた対馬丸が攻撃を受けて沈んだことを伝える対馬丸記念館。

沖縄歴史博物館では、沖縄の霊場と儀式の展示とともに、夥しい戦争遺物が集められていました。

地上戦が行われ、映画にもなった「ハクソー・リッジ」のある浦添の胸に沁みるような夕焼け。

首里城もまた、戦火で焼け落ちました。首里城の地下には旧日本軍の司令部壕が今も残ります。

そして古の王たちが、戦った今帰仁城(グスク)。

どこもほぼ、人がいませんでした。

静寂と海からの風と、鳥の声。

最も大切な人や風景が、一瞬で失われてしまう戦争。

明日を夢見て、生きていた人たちの命が簡単に奪われてしまう理不尽さへの怒りと悲しみ。

沖縄だけではく、世界の各地で、今も・・・。

こんな美しい島で、こんなことが・・・と

戦争の爪痕、思いを残した人々の祈りの想いに打ちのめされ、顔を上げることができない気持ちを抱えて地下壕を歩きました。心臓が早鐘のようにうち、喉がカラカラでした。

地下壕から外に出ると、穏やかで静かな波の緑と青の海が広がり、空から一筋の光が差していました。

平和を祈ります。

一人一人の心の平和からそれはもたらされると信じています。






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