立春大吉。新年大祓祭。
昨夜は近所の真言宗のお寺で護摩法要が営まれ、
装束に身を包んだ修験者が集い炎に向かって法螺貝を吹きあげ、
隣接する神社では篝火の中、神笛の奏上。
仏と神が新しい一年を寿ぐ。
朝、雨上がりの中を茅の輪潜りに再拝。
生き直し、産まれ直しの感覚が心地よいです。
「産まれ直し」
自らの身体と心に向き合う暮らしの中で、灯火になるものを探している。
それは、
触れ触れられた手の温もり、
雨の後の土の匂い、
雲間から刺す神々しい光、
じわりと嗅覚を呼び覚ます花の香り、
そして極上の読み物たち。
そのひとつ。
『葬送のフリーレン』という大魔法使いの物語。
連載を楽しみにしてきたのですが、
去年アニメ化されて世界観そのままに音と色彩と言葉が物語を彩っています。
物語はフリーレンやヒンメルたち勇者の一行が魔王を倒したその後から始まります。
ここが面白いところ。
もう魔王退治は終わっている。
そこから始まる。
フリーレンは魔法使いなので、1000年以上生きるのですが、
魔王を倒した勇者であっても人間はいつか老いやがてこの世を去る。
これは命あるものの必定。
わたしたちはいつか、必ずこの世界を旅立つ。
物語の主人公フリーレンは仲間たちを見送り「人を知るため」の旅に出るのです。
命短い人間の仲間たちが発した思いや言葉を、
旅のさまざまな人に出会いながら理解を深めていく。
淡々と過ぎゆく日常の美しさに気づいているようで気づけなくて、
でもあとからずっしりと噛み締めるような、
「産まれ直し」のロードムービーになっているように思います。
フリーレンの飄々とした佇まいも、新たな仲間との会話にも胸を掴まれる。
長い命をもつエルフのフリーレンの目を通して、
「いのちとは何か」「この短い人生を通して伝えたいことは何か」を
問いかけられているようにも感じます。
アニメ版も素晴らしいのでご興味持っていただいた方は機会があればぜひに。
すでに、どっぷり世界に入っているよーという方は語り合いましょう!
茅の輪をくぐり、手を合わせる。
楠の葉ずれの音が聞こえる。
祝詞をあげる静かな声。
低い太鼓の唸りのような振動。
わたし自身の産まれ直しの意味を考える。

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