スピリチュアルケア
- はやしひろこ
- 2007年7月20日
- 読了時間: 2分
緩和ケア病棟へのアロマセラピートリートメントに
定期的に伺っていた頃がありました。
どんなサポートができるのか、
何も分からず、無我夢中でただただ
植物の優しい香りに助けてもらい、
ゆっくりとお話しを伺うことに
集中するのがやっとでした。
私の中に、死についての確たる信念がなく、
軸がゆらいでいたからだと思います。
死を目前にした方は
語りたいこと、伝えたいことが
たくさんあるようでした。
こころ込めてお話しを伺うと、
「死」について思いを語りだす方も
少なくありませんでした。
アロマセラピストは、肉体の症状の緩和だけでなく、
スピリチュアルケアの領域でも
できることがたくさんある、と
その経験を通じて思いました。
一生懸命に語りに耳を傾け
優しく触れるタッチングによって
人は落ち着きを得て、
自己を受け入れていきます。
そして安心感のなかで、
自分の人生をゆっくり振り返り、
深い魂のレベルでの痛みや悲しみを
和らげてくれるのです。
緩和ケアでいつもわたしが感じたのは
「人は生きたように死んでいく」と
いうことでした。
とても明るい病室があります。
緩和ケアで明るいということは
矛盾しているのかもしれませんが、
その病室にはなにか明るい穏やかな光が
満ちていて、
静かな微笑みを浮かべて眠りにつく患者さまと
患者さまを囲む家族が親密に寄り添い、
卵のようなエネルギーのカプセルを作っています。
その病室に行く誰もがそのエネルギーに癒され、
穏やかさや静けさを感じるのです。
もう話すこともできず、語ることもできない
患者さまのどこにそんな力があるのだろうと
何度も何度も考えました。
物質的な側面だけで考えると、
説明することはできないのです。
人はすべて生れ落ちた瞬間から
死という始まりに向かっていく存在です。
人は生きたように
死んでいく。
今という瞬間に感謝し
どれだけの愛を表現できるのか。
人の価値というものがもしあるとしたら
どれだけ得たか、
どれだけ持っているか、
ではなく
どれだけ与えたか、
どれだけの愛と心を込めて人を愛したのか
だけが秤になるのです。
愛という衣を身にまとい、
心地良いエネルギーを循環させて
死というこの肉体の終わりの日まで
いのちを輝かせていきたいのです。
Comments