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執筆者の写真はやしひろこ

まなざし体験と在り方 の「あ」

7月からのオンラインでのこころとからだのケアのご相談再開の記事にメッセージをたくさんいただきました。ボディケアのお問い合わせもありがとうございます。

お気持ちをとても嬉しく受け止めています。

当面はオンラインのみの対応とさせていただきます。

ズームというアプリを使用してお互いにお顔を見ながら、気軽にお話ししていただける場になっています。

コロナ禍での試行錯誤を何百と繰り返してきました。お話だけなく、必要であれば問題解決につながるワークを行ったり、セルフタッチケアの体験も行っています。


「触れるケア」と一見真逆に思うようなオンラインを用いた遠隔でのご相談ワークになりますが、そこに、呼吸とまなざしがあり声があり思いがあるならばオンラインでも十分に「触れる」ことができると考えています。


ラヴィングタッチケアでは、ただ触れることの当たりまえのように思えるケアの中で、触れる側の在り方を大切にしています。


相手を尊重し、尊厳を守り、慈しみの気持ちを伝える前に、荒々しく猛々しい自分自身の心を鎮め、不安や見通しへの混乱を整えるために幾つかのヒントをお伝えしています。


いつもいつも、どんな時も

「自分を尊重し大切にし相手の尊厳に丁寧に向き合い、命を慈しむ」ことができたら・・・。


これはかなり高いハードルになると思うのです、少なくとも私には。


でも対人支援の場において、ケアの場においては、少なくとも相手に触れる、あるいは共にいるそのお時間だけは、この<在り方>が求められると考えます。


あり方の「あ」、一番最初は「あたたかいまなざし」から。


でも難しいですよね。どんなまなざしが温かいの?

どうやったら温かい眼差しになるの?

あたたかくない眼差しとの差はあるの?


ちょうど感染症での行動制限が始まったとき、ポリヴェーガル理論提唱者ポージェス博士の来日講座に申し込みをして楽しみにしていました。

海外からの渡航制限のため急遽、来日は叶わなくなりパートナーであるオキシトシン研究者のスー・カーター博士とのオンラインでの研修となりました。

そこでポージェス博士が、オンラインであろうと心のつながりは十分に感じられると力強くおっしゃってくださったことは、数日に渡り興味深いポリヴェーガル理論、つまり人の心と自律神経との関係を示唆するご講義よりも深く心に刻まれました。

実際、ポージェス博士とカーター博士の優しいまなざしは時間も距離も超えて、オンラインの画面に集まる人の心に柔らかな波紋のような静けさと親密さをもたらしていました。


まなざしが人の感情や自律神経系にもたらす身体的・心理的な効果について考えてみましょう。


まなざしは、相手の感情を読み取ったり、コミュニケーションを取る上で重要な役割を果たします。

相手の目を見つめることで、表情や視線の動きから相手の感情を察知することができます。


新生児は、生まれてすぐは視覚が発達しておらず、顔の細部や表情を識別する能力も限られています。養育者に抱かれた時の近さが最適な視力の焦点になります。お顔を見つめて、匂いを嗅ぎ、触覚で世界を感じ、声と表情をつなげて、人の心について理解を深め、数ヶ月経つと徐々に視覚や表情の認識能力が発達していきます。


研究では生後すぐの赤ちゃんが、自分を見つめている大人の顔の表情の模倣をしたり、養育者の顔の表情から、特に目から心の状態を推察したり、自分の行動を決める手掛かりにしているとも言われています。


まなざしによって相手の感情が伝わることで、共感や共鳴が生まれます。相手の喜びや悲しみを感じることで、エンパシーが働き、自分自身の感情や自律神経が影響を受けることがあります。


しかし、「まなざし」は言葉を超えたコミュニケーションでもあり、神経系のレベルで意図を読み取るため、悪意のある眼差しなのか、慈しみの眼差しなのか、によって身体的生理的な反応は異なります。


包み込まれるような柔らかな視線を、信頼している方から受けると、副交感神経が活性化し、リラックス効果が生じることがあります。


反対に、批判的な目、咎めるような意図を込めた目、相手の尊厳を奪うような強い蔑みの目からは闘争/逃走システムのスイッチが入り、恥ずかしい思いや過去の辛い体験をも呼び起こすことがあります。

視線が集中することにより注意力や集中力が高まることもあれば、あえてアイコンタクトを避けることで心理的な安全を守ることもあります。


暖かな慈しみを感じる眼差しからは、相手との信頼関係や絆が深まることがあります。

多くの方は目を合わせることで、相手とのつながりを感じることができ、コミュニケーションの質や相互理解が向上します。


まなざしは感情の表現にも重要な要素であり、笑顔や悲しみなどの感情を相手に伝える手段となります。

相手のまなざしを大切に受け止めることで、より良い関係を築き、心身の健康や幸福感を促進することができるでしょう。


タッチケアの研修やワークショップでは、実際にまなざしで触れられる、触れる体験を積み重ねることで、まなざしの力を感じていただきます。


病気のお子さんへのご家族からのタッチケアを長くお伝えしていますが、重症児さんや進行性のご病気のお子様を持つご家族の方から、「まなざしのタッチが一番、親子の関わりを豊かにし、支えてくれました」とメッセージをいただきます。


私のおすすめのまなざしのワークは、朝晩、顔を洗った後に、鏡に映るご自身を、慈しみのまなざしで20秒ほど見つめることです。

多くの方は、ご自身の呼吸が変わることに気がつくでしょう。

生まれてからずっと共に世界を旅してきたご自身への労りの気持ちが湧いてくるかもしれません。

そのまなざしをじっと見つめていると、自分だけではなくこれまで出会ってきた人たちの優しい眼差しが重なり合っていることに気づくかも知れません。







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