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執筆者の写真はやしひろこ

「ACEへの医療について」のご講義から

先週に続き、子ども時代の逆境的体験(The Adverse Childhood Eperience:ACE)に対する医療とトラウマ講座、終了。

ケアルームで出会う方にも、トラウマ体験が基礎にあるため、

生きづらさや自己イメージの低さ、感情のコントロールの難しさ、

対人関係の困難さを感じている方も少なくありません。

トラウマという言葉をださなくても、たとえば子育て中のありふれた場面がトリガーとなり

暴言や激しい身体接触になることに苦しむ方など、

丁寧に背景をみていくと、小児期でのつらい体験がみられるのです。

トラウマ、とくにこども時代の逆境的体験は、しばしば脳の機能に大きな影響を及ぼします。

1995年から1997年の17000人を対象に行われたACE研究では、

10の項目と逆境的体験が関係していることがわかりました。

虐待、ネグレクト、依存などACE体験は非常にありふれたものであり、

アメリカでは成人の2/3、日本でも1/3の方がACE体験者であるということを前提にして

セラピーやケアをおこなうべき、という専門家の意見もあります。


たとえば日本では2013年の友田先生の研究では、

「マルトリートメント(不適切な養育)」を受けたこどもは、

脳の扁桃体や側坐核、海馬の機能が低下することがわかってきました。

行動や発達の問題にACEの影響があるのではないかとも言われていますし、

ACEと喫煙、薬物摂取、メンタルヘルス、ハイリスクな行動、がん、寿命にも関わるようです。


今回の福井大学の杉山登志郎先生のACEと医療に関するご講義では、

発達障がい臨床で関わる親子に、発達障がいと非常に似たACE体験による

脳の器質的、機能的変化がみられるとの事例をご紹介いただきました。

愛情を注ぐほど行動問題が増えることや、こども虐待の後遺症とみられるさまざまなPTSD症状の

メカニズムについての考察に、理解が深まりました。


臨床でのトラウマ処理には、トップダウン型とボトムアップ型がありますが、

ことばを用いることが、とくに言語能力が未熟であるこどもにとっては逆効果になることもある、

という事例も理解できるものでした。

杉山先生の考案された身体感覚、運動感覚、タッチを用いた身体性のトラウマアプローチであるTSプロトコルは、

簡単で誰にでもすぐできて、タッチケアとも親和性が高いものでした。

また催眠療法を実践するセラピストとしては、

パーツ療法のような人格統合へのアプローチ法が興味深いものでした。

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